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脳内は常に夏真っ盛り!初めてご来訪の方はAboutに目をお通しくださいv *女性向け非公式*

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企画ss第二段!
みつさんリクでヘル吹です!参加ありがとうございましたvRead Moreからどうぞー!

みつさんのみお持ち帰り可ですv

 ***

  移ろいゆく日々の中で

 いくら日が落ちるのが遅くなったとはいえ、7時を過ぎれば流石に辺りも真っ暗だ。しかし上を見上げれば、ぺっとりと塗りつぶした紺碧にぽっかりと月が浮かんでいた。まるでくっきりとそこだけ塗り忘れたようなその月は、地上を薄ぼんやりとその光で照らす。おかげで懐中電灯の類がなくともしっかりとした足取りで医療棟に着いた吹雪は、部屋番号をひとつひとつ確かめながら目当ての病室を目指す。目当ての病室――亮が入院している病室は、比較的すぐに見つかった。小さくひとつ深呼吸をして、コンコンコンときっちり3回ノックをする。すぐに中から返事が聞こえ、吹雪はそっと扉を開けた。
「…吹雪か。」
「やあ。」
 にっこりと人好きのする笑みを浮かべて、吹雪は亮のベッドに近づく。亮はどうやら読書中だったらしく、サイドテーブルに置いてあった栞を膝の上に乗っているやや厚いその本に挟んだ。
「読書の邪魔しちゃったかな?」
「いや…どうせ、何度も読んだ本だ。」
 青い表紙の本をサイドテーブルに静かに置いて、亮はベッドサイドに立つ吹雪を見上げた。なんだい?と首を傾げる吹雪に、亮は呆れたような声を出す。
「何か用があってきたんじゃないのか。」
「ああ!そう、そうなんだよ亮!散歩行かないかい?」
 ――数瞬の間。亮は二の句が告げなかった。
「…今からか?」
 漸く絞り出した疑問は確かに大気を揺らしたが、吹雪の一言に掻き消される。
「そうだよ。」
 亮は窓の外を見た。そして、病室にかかっている時計を見て、もう一度外を見る。――確かに午後7時だ。間違っても午前7時ではない。
「…正気か?」
「僕はいつだって真面目だよ!」
 言いながら、吹雪は病室の隅に置いてあった車椅子を押して亮に乗るよう促した。目が本気だ。亮は、こうなった吹雪が頑固だということを嫌と言うほど知っていた。仕方ない…どうせなら早く終わらせるか、とため息をひとつ落として、吹雪を見やる。
「それはいい。歩いて行ける。」
「ダーメ。病人なんだから、無理は禁物だよ?」
 軽くおどけたような口調だが、依然として目は本気だった。しかし亮はベッドから降りて上着を羽織り、扉へ向かう。ぽつんと取り残された吹雪を振り返り、早く行くぞと声をかけた。
「…亮。」
 吹雪は車椅子をそこに放置し、亮の前に回りこむ。半強制的に歩みを止められた亮はやや迷惑そうに眉をしかめた。行くならさっさと行くぞと亮が呟く。――瞬間、吹雪は制服の内ポケットに手を入れて何かを取り出した。黒くて重厚感のある鈍い光沢を放つそれは、一目で銃と分かる。
「……。」
 吹雪の手になじむ大きさのそれを亮に突きつけて、吹雪は低い声を轟かせた。
「座って。じゃなきゃ撃つ。」
 簡潔だが強制力のある命令にも亮は屈しない。ふん、と鼻で笑って、挑戦的に吹雪の攻撃的な視線を真正面から絡めとった。
「撃ってみろ。…撃てるものならな。」
 不敵な笑みでそう言い放ち、腕を組んで銃口を見つめる。冷たく重い銃口は、亮に向けられたままただ沈黙を守っていた。暫く部屋には、深とした静寂が流れる。その静寂が耳に痛くなってきた頃、吹雪はふっと口角を上げた。
「それなら、お望みどおり撃ってあげるよ。」
 覚悟してよ?ぐっと右手に力が篭められる。亮はそれでも微動だにしないで銃口を見つめ続けた。吹雪は銃口を亮の眉間に向け、一気に引き金を引く。暴力的なまでの爆発音が辺りに響き渡る――はずだった。だがそのような音はせず、代わりにポンッとひどく間の抜けた音が響く。銃口から勢いよく飛び出したのは銃弾ではなく、純白の花だった。亮の眉間ぎりぎりまで迫るその花が何なのか、亮には皆目分からないし分かろうとも思わない。だが、これだけは分かった。
「相変わらずだな、吹雪。」
「知ってたんでしょ?」
 吹雪は笑みの種類を変えて銃を下げる。
「当然だ。俺に自殺願望は無い。」
 亮の声音は自信に満ちていた。本当に銃弾が飛び出したらどうする気だったのかと思うと吹雪は少し笑ってしまう。亮は笑う吹雪を怪訝そうに見つめながら数歩戻り、車椅子に腰を下ろした。
「亮…。」
「本当に、お前は相変わらずだな。」
 早く行くぞ。本日二度目の台詞を零しながら亮は車輪を手で押して扉へ向かう。はっと我に返った吹雪は慌ててベッドサイドに常備してあるブランケットを持ってきて亮の膝に置いた。
「風邪引いちゃうから、かけててよ。」
「…いらん。」
「いいから!」
 強引に押し付けて、吹雪は後方に回りグリップを握ると、ゆっくり車椅子を押す。亮は渋々ブランケットを膝にかけた。ゆっくりと玄関を抜け、外へ出る。凛と冷たい空気が穏やかな沈黙と共に二人を包み込んだ。沈黙を保ったままゆっくりと進む。やがて森の中に入ると、吹雪がぽつりと呟いた。
「…調子はどう?」
「おかげ様で良好だ。」
 事務的な返事に、吹雪はほろ苦く笑う。
「あんまり無茶したらダメだよ。」
「お前に言われずとも、無茶などしていない。」
「…そっか。」
 何気なく織り上げた言葉に淋しさが混じってしまった。まずい、と亮の表情を盗み見る。――どうやら気づかれなかったようだ。ほっと胸をなでおろした瞬間、亮の声が吹雪の鼓膜を揺らした。
「――吹雪。」
 ぎくりと身を強張らせて吹雪は思わず歩みを止める。亮は構わず吹雪を見上げ、やや癖のある吹雪の髪をくいっと引っ張った。されるがままに前かがみとなった吹雪の唇に温かいものが押し付けられる。それが何なのか理解するまでに、聡明な吹雪にしては珍しく数秒を要した。亮は存分にその温もりを堪能して、すっと唇を離す。同時に髪も離され、吹雪は自然と中腰姿勢から直立に戻った。不意に温もりの消えた唇を信じられないように人差し指でなぞりながら、吹雪はやっとのことで言葉を紡ぐ。
「っ……気づいた…?」
「気づかない訳があるか。」
 やや厳しい口調で亮はそう言い、ふいっと前を向いた。
「…お前の周りにはいくらでも人がいるだろう。あれだけ仲間がいて、何をまだ淋しがることが…ッ、」
 突如首にまわされる腕に、亮は思わず言葉を切る。後ろから亮に抱きついた吹雪は小さく首を振った。
「違うんだよ、亮。……世界中の誰もが僕の仲間だったとしても、亮が僕の傍にいてくれなきゃ、嫌だ。」
 百人の他人よりも、一人の亮がいいんだ。吹雪は腕に少しだけ力を篭める。亮は暫くそれを受け入れていたが、どうやらそれに答える気はないらしく、徐に吹雪の腕を解いた。
「医療棟の門限は、8時だ。」
「……うん。そろそろ戻らなきゃね。」
 吹雪はなんとか笑顔を作って、再び車椅子を押し始める。来た道をそのまま引き返すその途中も、来たときと同様に終始無言だった。多少の息苦しさを覚えるその沈黙に身を委ねて帰路を辿る。堪りかねてふっと上を向くと、吹雪が一人でここを通ったときと同じく月は塗りつぶされることも無くそこに在った。しかし、その位置は大分高くなっている。毎日同じように見える星空もかかる雲は毎日違う。風の強い日があれば凪の日もあるだろう。ずっと同じものなんて、所詮この世には在り得ないのだ。
 何もかもが日々移ろいゆく。満天の星空も、ゆるりと吹き流れる風も、毅然とそこに咲く花も、楽しげに歌う鳥たちも、――僕を好きだと言った、その心も。

 君の心は、もう変わってしまったのかなあ?

  -Fin-

 ***
 リクエストありがとうございましたvまともにヘルを書いたの初めてなんですが、「それにしてもこのヘル、ツンデレである。」な出来となりました。とりあえず車椅子デートです(違)亮はヘルになっても根っこの部分では「亮」なので、吹雪さんの行動にやや振り回され気味だといいなあ、なんて…!

 これからもよろしくお願いします><//

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